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  ・・・・ 現在のところ、健康保険でピロリ菌の検査や除菌療法が出来るのは、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃MALTリンパ腫、特発性血小板減少性紫斑病、早期胃癌術後の確定診断が出来ている方だけで、ピロリ菌を持っているというだけでは検査、除菌療法ともに保険適応になりません。ただ遂に 2013 年春より、胃カメラ(胃透視いわゆるバリウム検査は対象外)により慢性胃炎の確定診断を受けた方も保険適応になりました。なお、自費による除菌の一番の目的は胃癌の発生率を下げることにあります。  
     
  ピロリ菌除菌療法について(ピロリ菌の説明を含む)  
   
  1).ピロリ菌とは  
強酸性の胃の粘膜の中で生息しているらせん形の細菌です。感染経路ははっきりわかっていませんが、おそらく乳幼児期に口から感染すると考えられています。衛生状態の良い時に育った、若い人の感染率は比較的低いのですが、50歳以上では約40〜50%の人がピロリ菌に感染しています。日本人のピロリ菌感染者の数は約3500万人と言われています。
         
  2).胃・十二指腸潰瘍とピロリ薗の関係  
    ピロリ菌を持っている人の一部に胃・十二指腸潰瘍が発生します。胃・十二指腸潰瘍患者のおよそ90%の人がピロリ菌を持っている人で、それにより潰瘍の再発が起こります。胃または十二指腸潰瘍患者の場合、再発の予防を目的に保険診療にてピロリ菌の検査・除菌療法が行われています。ピロリ菌が除菌出来れば、潰瘍の再発はかなりの割合で抑えられます。(1/5〜1/10以下)    
       
  3).胃炎とピロリ菌の関係  
    ピロリ菌が感染するとほとんどの方に軽い胃炎が起こります。持続感染する事により、慢性胃炎(萎縮性胃炎)が起こり、弱い胃粘膜を作ると考えられています。また、慢性の炎症・萎縮が癌の発生母地になりやすいと考えられています。現在のところ、日本では胃炎に対するピロリ菌の検査・治療は保険診療の対象外になっています。2013年春より、胃カメラにより確定診断された慢性胃炎のみピロリ菌の検査・治療が保険診療の対象となりました。    
       
  4).胃癌とピロリ薗の関係  
    ピロリ菌感染が持続すると、萎縮性胃炎となり、胃癌の発生母地になりやすいと考えられています。数年間ピロリ菌陽性の人を追っていくと、約3%の人で胃癌の発生が見られたのに対し、陰性の人からは胃癌がほとんど見られなかったという日本の報告があります。WHO(世界保健機構)は、1994年に「ピロリ菌は、胃癌に対する第一級の危険因子である」と声明を発表しています。ピロリ菌が陽性の人は陰性の人に比べて、胃癌の発生の危険が数倍高いと報告されています。喫煙が加わると10倍以上になるとも報告されています。
 以上のように、ピロリ菌が除菌されれば胃癌の発生が抑えられるという状況証拠がそろってきています。2009年には、ピロリ菌を持っている人全員に除菌療法を推奨すると日本ヘリコバクター学会のガイドラインでも発表されました。
   
         
  5).ピロリ菌の検査方法  
    内視鏡(胃カメラ)にて胃粘膜の組織の一部を採取して、顕微鏡・細菌培養・酵素の検査をする方法や、薬を飲んで呼気を採取する方法、尿や血液中のピロリ菌に対する抗体を測定ずる方法、便中のピロリ菌抗原検査などがあります。当院では血液検査と呼気検査(尿素呼気試験)を採用しています。前者はピロリ菌の存在(除菌前)の確認に、後者はピロリ菌除菌成功の確認に使っています。    
         
  6).ピロリ菌の除菌療法  
    a)、一次除菌
 プロトンポンプ阻害剤(胃酸分泌を抑える潰瘍の薬)と2種類の抗生剤を朝夕1日2回、1週間きっちりと内服して頂きます。80〜90%の除菌成功率です。成功すれば潰瘍の再発率は1/5〜1/10以下に激減します。ただ潰瘍の原因はストレスや喫煙などほかの要素もありますので、0にはなりません。
 副作用は下痢、軟便が主(10%〜30%)ですが、服用期間中が過ぎれば回復してきます。他にわずかですが味覚異常、肝機能障害(自覚症状がない場合があるので、当院では服用終了後に肝機能検査を実施しています。)が少数ですが見られます。抗生剤によるアレルギー(皮疹などのアレルギー反応が主)があり、血便や腹痛、発熱を伴う出血性腸炎がごくたまにあり、この様な強い副作用があれば(当院では今までのところ、中止に至った例はありません。)すぐ内服を中止して連絡ください。治療が必要な場合は保険診療での対応をさせて頂きます。
   
         
    b)、二次除菌(一次除菌が無効だった場合)
 抗生剤を1種類変更して、やはり1週間内服となります。一次除菌で無効な方の約70〜80%が除菌に成功します。つまり、二次除菌までしてピロリ菌が消失しない確率は、多く見積もっても5%程度ということになります。二次除薗中は必ず禁酒です。飲酒するとアルコールが分解しにくくなり、急性アルコール中毒のようになったり、薬の作用が弱くなって成功率が下がります。副作用は一次除菌とほぽ同様で、対応も同じとなります。
   
         
     c)、除菌の欠点
 除菌に成功すると、胃粘膜の炎症の改善とともに胃酸分泌が活発になり、約10%の方に逆流性食道炎(胸やけなどの症状)が発生すると報告されていますが、多くは薬なしで改善します。また、胃の調子が良くなり食欲が出て、体重が増加してしまう事もあり、糖尿病や脂質異常症、肥満などの方は自己管理をお願いいたします。
   
       
     d)、その他
 ・除菌成功により胃癌の発生率を下げる事が出来ますが、0にはなりません。
  健康診断や人間ドックにより胃カメラやバリウムを年1回は受けましょう。
 ・授乳中や妊娠している可能性のある間の除菌治療は出来ません。
 ・ペニシリンシリンアレルギーの方も出来ません。
 ・他に慢性疾患や薬剤アレルギーのある方は除菌治療しても良いか、
  主治医とも御相談ください。
   
         
  自費によるピロリ菌除菌療法の実際の診療の流れとかかる費用(基本料)  
           
    1)、初回受診 7,700円    
    除菌療法の説明と採血(ピロリ菌抗体、肝機能)をします。    
         
    2)、約1〜2週間後に再診 2,000円 (終診は1,000円)    
    結果説明と除菌療法開始。ただし、ピロリ菌陰性の場合は終診です。ピロリ菌陽性で肝機能に大きな問題がなければ、除菌薬剤の処方箋発行いたします。ただし薬剤費が別途約6,000円必要です。    
         
    3)、除菌療法終了約1週間後に再診 3,000円    
    肝機能に影響がないか確認のための採血と診察をさせて頂きます。    
         
    4)、除菌療法終了1〜2ケ月後再診 7,500円    
    除菌効果判定として、尿素呼気試験を行います。予約はいりませんが、当日は絶食でお越しください。    
         
    5)、尿素呼気試験の約1週間後再診 1,000円    
    尿素呼気試験の結果説明です。成功しておればこれで終了です。残念ながら不成功の場合で、二次除菌希望の場合は上記2)に戻り、二次除菌を開始します。この時は薬剤が変りますので、薬剤費は別途約5,500円に変ります。その後は3)、4)、5)と進みます。二次除菌を希望されない場合は終了となります。    
       
    つまり、一次除菌で除菌成功であれば、21,200円 + 薬剤費 (約6,000円) = 27,200円程度になります。また、二次除菌までとなると合計で、33,700円 + 薬剤費 (約 11,500円) =45,200円程度になります。三次除菌は今のところ、まだ考えていません。    
         
    人間ドックなどでピロリ菌抗体が確認されていたら、少しお安くなりますし、逆に抗体の判定が難しく、他の検査法も併用しなければならない場合など、少しお高くなる場合もあります。上記価格は目安とお考えください。    
         
     なお、いろいろなケースが考えられますので、念のため健康保険証とあればお薬手帳をお持ちください。    
     
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